概要 血糖値の正常値について
血糖値が高い場合は、糖尿病が疑われます。
糖尿病は合併症などを引き起こし、ときに命の危機を招くこともある疾病です。
ところで、そもそも血糖値の正常値とはどのくらいなのでしょうか。
本記事では、血糖値の正常値について以下の点を中心にご紹介します。
- 空腹時の血糖値の正常値
- 食後の血糖値の正常値
- 血糖値が高い場合の看護方法
血糖値の正常値について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
第1章 血糖値とは
血糖値とは、血液中のブドウ糖の量を示した数値です。
血糖値は、高くても低くても健康によくないとされています。
血糖値が下がらなくなる状態は、「糖尿病」と呼ばれています。
糖尿病には様々な合併症のリスクが伴うため、日頃から予防することが大切です。
第2章 血糖値の種類別の正常値
健康を維持するには、血糖値 を正常値に収めましょう。
ちなみに血糖値は、食事の前後で大きく変動します。
そのため、正常値は計測するタイミングによって異なります。
血糖値の正常値の種類は、次の3種類です。
- 空腹時
- 食後すぐ
- 食後、時間が経過してから
それぞれの正常値をご紹介します。
空腹時血糖
空腹時血糖の正常値は、100mg/DL未満です。
具体的には、70mg/dl〜99mg/DLが正常値に該当します。
ちなみに空腹時とは、少なくとも8時間以上絶食した状態を指します。
健康診断では、多くの場合、空腹時血糖が測定されます。
空腹時血糖が100mg/DL以上の場合は、糖尿病の可能性があります。
なお、糖尿病と診断されるのは、空腹時血糖値が126mg/DL以上です。
空腹時血糖値が110〜125mg/DLの場合は、「境界型」と診断されることが一般的です。
境界型は、「糖尿病予備軍」とも呼ばれています。
食後すぐの血糖値
食後すぐの血糖値の正常値は、140mg/DL未満です。
食後すぐとは、具体的には食後2時間を指します。
空腹時血糖より正常値の範囲が高い理由は、食事をすると血糖値は大なり小なり変動するためです。
血糖値は食後1時間頃にピークを迎え、時間の経過とともに元の数値に減少していきます。
食後の時間が経った後の血糖値
食事から数時間(2時間以上)経ったときの血糖値の正常値は140mg/DL未満です。
食事から数時間経った血糖値は、「随時血糖」と呼ばれています。
随時血糖が140mg/DL以上の場合は、食後高血糖が疑われます。
食後高血糖の方は、隠れ糖尿病の可能性があります。
HbA1c
HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)は、糖化ヘモグロビンの割合を示した数値です。
糖化ヘモグロビンとは、血中ヘモグロビンと糖が結合したもので、過去2ヶ月の血糖値の指標になります。
HbA1cの正常値は正常値は4.3%〜6.2%です。
HbA1cが6.5%以上の場合は、糖尿病の可能性があります。
第3章 低血糖・高血糖の基準値は?
血糖値の基準は、通常の場合、空腹時の血糖値は約70~100mg/dlです。
健康な人でも食事の影響によって変動します。
食事を取ると炭水化物などが吸収されて血液中にブドウ糖が増え、血糖の濃度が上がるとインスリンというホルモンのはたらきによってブドウ糖は体のエネルギーとなります。
低血糖
血糖値が70mg/DLより低いと低血糖となります。
症状は下記のとおり、
- 70mg/DLほどで交感神経症状である「汗をかく・脈がはやくなる・手や指が震える」などがあらわれる
- 50mg/DLほどで中枢神経症状である「頭痛・目のかすみ・集中力の低下」などがあわられる
- 50mg/DL以下になると「異常な行動・けいれん・昏睡」などがあらわれる
といった症状が出てきます。
低血糖は糖尿病の薬を服用されている方によく見られ、特に炭水化物が不足している場合に低血糖を起こしやすくなります。
薬の種類によっても低血糖の起こしやすさは変わりますので、自分の薬の特徴をよく確認しておきましょう。
高血糖
空腹時の血糖値が100mg/DL以上だと高血糖とみなされます。
症状は下記のとおり、
- 高血糖による症状は「口渇・多飲・多尿・体重減少・易疲労感」
- 合併症による症状は「視力低下・足のしびれ・勃起障害・無月経」
といった症状が出てきます。
高血糖になると糖尿病のリスクが2倍以上になるとされています。
体の臓器や組織では、細胞がたえず血糖(血液中のブドウ糖)を取り込み、エネルギーに換えて活動しています。
その取り込み作業にはインスリンが不可欠で、インスリンの作用が不足すると、高血糖をまねきます。
第4章 血糖値の正常値の検査方法は?
健康診断では、通常、空腹時に採血が行われます。
空腹時血糖値は109mg/dlまでが正常値です。
ただし、100-109mg/dlは正常高値といわれ、詳しく調べると、糖尿病の場合や糖尿病予備軍の可能性があります。
食事を食べた後に健康診断を受けた場合には、血糖値(食後血糖値)が空腹時の血糖値より高くなることがあります。
随時血糖検査(血液検査)
随時血糖とは、食事時間とは無関係に測定した血糖値のことです。
食事により上昇する血糖値を把握する目安となります。
空腹時血糖値100mg/dL に対応する随時血糖値は食後1時間までであれば140mg/dL。
食後3~4時間以上経過した場合は, 100mg/dLが目安となります。
75g経口ブドウ糖負荷試験(血液検査)
75gブドウ糖負荷試験とは、空腹時に75gのブドウ糖を飲み、30分後、1時間後、2時間後に採血を実施して、血糖値を測定する試験です。
空腹時の血糖値が正常か少し高いだけでも、食事後の血糖値が上がっていて、実は糖尿病だったということはよくあります。
健康診断だけではなかなか見つからないので、隠れ糖尿病などとも呼ばれています。
このような、隠れ糖尿病も確実に見つける方法が、ブドウ糖負荷試験です。
健康診断などで血糖値が少し高いといわれたことのある方は、ブドウ糖負荷試験を受けることをおすすめします。
HbA1c(血液検査)
ヘモグロビンは赤血球内のタンパク質の一種で、全身の細胞に酸素を送る働きをしています。血液中のブドウ糖がヘモグロビンとくっつくと糖化ヘモグロビンになります。
血糖値が高いほどヘモグロビンに結合するブドウ糖の量が多くなります。いったん糖化したヘモグロビンは、赤血球の寿命(120日)が尽きるまで元には戻りません。
血糖値の低い状態が続くと、ヘモグロビンに結合するブドウ糖の量が少くなるので、HbA1cは低くなります。
血糖値の高い状態が続くと、ヘモグロビンに結合するブドウ糖の量が多くなるので、HbA1cは高くなります。
HbA1cは糖化ヘモグロビンがどのくらいの割合で存在しているかをパーセント(%)で表したものです。
過去1~2ヶ月前の血糖値を反映しますので、当日の食事や運動など短期間の血糖値の影響を受けません。
HbA1cは世界中で測定されていますが、世界の大多数の国に比べ日本の測定値は約0.4%低値に測定されていました。
2012年4月より、日本でも国際的に広く使用されている測定値を使用することになりました。
尿糖(尿検査)
尿は、腎臓内で血液から作られます。血液中のブドウ糖は腎臓の尿細管と呼ばれる部分から再吸収されるため、尿中には少量のブドウ糖だけが含まれます。
そのため、通常では尿試験紙による検査では尿糖は検出されません。
ところが、血糖値が高く尿細管からの再吸収が追い付かない場合や、血糖値の上昇がなくても腎臓がブドウ糖を排出しやすくなっている場合に、尿糖が検出されるようになります。
血液検査による食後2時間血糖値およびヘモグロビンA1c(HbA1c)に、尿検査を併せて実施します。
尿糖陽性が高血糖によるものか、あるいは腎臓がブドウ糖を排出しやすくなっていることによるのかを判別することができます。
第5章 血糖値の日内変動の平均的な正常値は?
血糖値は、1日を通して絶えず変動します。
具体的な数値は、人によって異なりますが、だいたい70〜130mg/DL内で変動することが一般的です。
血糖値が最も低くなるのは、睡眠中・朝食前です。
食事を摂ると血糖値は、一時的に上昇します。
食後数時間が経過すると、インスリンの働きによって血糖値は徐々に下がっていきます。
ここからは、1日を通した血糖値の平均的な値を紹介していきます。
1日の平均値:男女別
1日を通した血糖値の平均値は、89mg/DLです。
空腹時血糖の平均は、
- 男性 97.3mg/DL
- 女性 93.7mg/DL
と、されています。
食間の平均血糖値
食感の血糖値の平均値は、昼間・夜間で次の通りです。
- 昼間:93mg/DL
- 夜間:82mg/DL
朝食後
朝食後の血糖値の平均値は、132mg/DLです。
朝食後は、最も血糖値が急上昇しやすいタイミングです。
そのため糖尿病の疑いがある場合は、朝食の内容を工夫することが大切です。
たとえば炭水化物を控えめにするなどして、血糖値の急激な上昇を防ぎましょう。
昼食後
昼食後の血糖値の平均値は、118mg/DLです。
血糖値が140mg/DL以上の場合は、隠れ糖尿病の可能性があります。
夕食後
夕食後の血糖値の平均値は、123mg/DLです。
昼食から夕食は、朝食から昼食に比べると長い間隔が空くことが一般的です。
そのため夕食後は、昼食後よりも血糖値が高くなる傾向がみられます。
第6章 食後3時間や食後すぐの血糖値の正常値は?
空腹時・食後の血糖値を比較します。
ぜひ参考にしてください。
80~110mg/DL未満
健常な方の場合、食後3時間頃の血糖値は80〜110mg/DL未満が正常値です。
食後3時間以上経過しても血糖値が140mg/DL以上ある場合は、食後高血糖が疑われます。
140mg/DL未満
食後2時間以内は、血糖値は140mg/DLに近くなることが一般的です。
140mg/DL以上の場合は、食後2時間以上経過しても140mg/DL近くある場合は食後高血糖の可能性があります。
140~170mg/DL未満
食後に血糖値が140mg/DLを超える場合は食後高血糖が疑われます。
空腹時の血糖値が140mg/DL以上の場合は、糖尿病の可能性が高いです。
ただし、健常な方でも食後の血糖値が140以上を超えることはあります。
140以上150mg/DL未満であれば、すこし様子を見てもよい場合もあります。
第7章 血糖値を改善する生活習慣
糖尿病の治療のためには、生活習慣の改善が必要です。
2型糖尿病の場合は、多くの方がまず生活習慣の改善がたいせつですし、1型糖尿病の場合でも、インスリンに加えて、状況によっては生活習慣の改善も加わることになるでしょう。
では、どのように生活習慣を改善していけばよいのでしょうか?
血糖値を改善する生活習慣を三つご紹介しますのでご覧ください。
炭水化物(糖質)を摂りすぎない
炭水化物(糖質)を摂りすぎないようにしましょう。
なぜなら、体重増加に影響し、食後の血糖値が、急激に上昇するからです。
血糖値が急激に上昇すると、体の中でインスリンが大量に分泌されます。
血糖値を下げるインスリンには、エネルギー源として使用されなかったブドウ糖を中性脂肪などにして体に蓄える働きがあります。
炭水化物を取りすぎるとインスリンがたくさん分泌されるため、太りやすくなるのです。
糖質量は1日70〜130gを目安にし、以下のとおりに摂取しましょう。
- お茶碗1杯のご飯(150g)の糖質量は約57g
- パスタ(100g)の糖質量は約73g
- 食パン1枚の糖質量は約30g
アルコールを控える
アルコールを控えましょう。
なぜなら、度を越した過剰なアルコール摂取で高血糖を来たし、それは同時に脂質異常症や高血圧などと相まって脳血管障害・虚血性心疾患の危険因子となるからです。
インスリンがうまく使えないことで血糖値(血液中のブドウ糖の値)が高くなります。
その結果として、目や末梢神経、腎臓などの小さな血管の障害から、やがて脳血管障害・虚血性心疾患などの動脈硬化疾患も引き起こしてしまいます。
以下の通りを目安に摂取しましょう。
- アルコールは1日2単位まで
- 1単位はそれぞれビールは500ml、ワインは200cc、日本酒は1合(180cc)
- 1日20〜25g程度
適量のアルコールは糖尿病の発生を抑えます。
運動習慣をつける
運動習慣をつけましょう。
なぜなら、ウォーキングやジョギング、水泳などの有酸素運動を行うと筋肉への血流が増え、インスリンの効果が高まり、血糖値は低下するからです。
以下のとおりに注意して行いましょう。
- 運動をやめると3日程度で効果が失われる
- 継続する
- 強度の高い運動はアドレナリンなどにより一時的に血糖値が高くなることもある
さらに筋肉量を増加し、筋力を増強する筋力トレーニングも、同様に効果があると言われていますので、有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせて行いましょう。
第8章 血糖値に対する看護方法
血糖値が気になる方の看護・介護方法をご紹介します。
ぜひ参考にしてください。
血糖コントロール
血糖値が高い方を看護する場合、看護者は血糖コントロールをする必要があります。
血糖コントロールとは、血糖値をできるだけ正常値内に収める方法です。
血糖コントロールの主な方法は、次のようなものがあります。
- 食事療法
- 運動療法
- 薬物療法
血糖コントロールをするためにも、看護者は血糖値の正常値をあらかじめ知っておく必要があります。
血糖コントロールを自己管理するための補助
血糖コントロールを成功させるには、本人の協力も必要です。
看護者がいないときでも本人が自ら血糖コントロールできるよう、やり方などを知らせておく必要があります。
あわえて、血糖コントロールの重要性などをあらかじめ本人に伝えることも大切です。
血糖コントロールの重要性が分かれば、本人の自発的な行動を促せるためです。
血糖値が異常な時の対処
看護者は、血糖値が異常になった場合の対処法をあらかじめ知っておく必要があります。
たとえば高血糖の原因が過食の場合は、食事の摂り方について改めて指導しましょう。
また、インスリン注射や糖尿病治療薬の服用の仕方に問題がないかをチェックすることも大切です。
第9章 血糖値の正常値とインスリンの関係
血糖値を正常に維持するには、インスリンの働きが欠かせません。
インスリンとは、血糖値を下げる作用のあるホルモンです。
食後に血糖値が高くなると、膵臓からインスリンが分泌されます。
インスリンは、血中の糖を分解して筋肉・細胞などに蓄えることで、血糖値を下げます。
ちなみに血糖値が低くなると、グルカゴンというホルモンが分泌されます。
グルカゴンは、細胞などに蓄えられた糖をエネルギーに変換して、血糖値を上昇させます。
インスリンの効きが悪くなると、血糖値が下がりにくくなります。
インスリンの分泌不足・機能不全によって血糖値が慢性的に高くなった状態は「糖尿病」と呼ばれています。
第10章 血糖値の正常値に関するよくある質問
血糖値の正常値に関するよくある質問をいくつかご紹介しますので、参考にご覧ください。
血糖値の正常値は妊娠中で変化ありますか?
妊娠すると女性の体内では胎児を育てるために糖代謝動態に大きな変化が現れます。
妊娠中に血糖が高くなる糖代謝異常の1つである妊娠糖尿病を発症した妊婦は健常妊婦に比べて、将来、糖尿病やメタボリックシンドロームを高頻度に発症するといわれています。
正常値を維持するために以下の通りに注意しましょう。
- 空腹時血糖値は60〜100mg/DL
- 食後1時間血糖値は140mg/DL以下
- 食後2時間血糖値は120mg/DL以下
- HbA1cは5.8%以下が理想
第11章 70代や80代の高齢者の血糖値の正常値はいくつですか?
超高齢社会を迎え、高齢者糖尿病は増加の一途を辿っています。
高齢者には特有の問題点があり、心身機能の個人差が著しく、それに加え、高齢者糖尿病では重症低血糖を来しやすいという問題点も存在します。
加齢とともに糖尿病の頻度は増加し、60歳をこえると男性でも女性でも糖尿病の頻度は15%程度となります。
すなわち、6人の高齢者のうち1人は糖尿病にかかっていることになります。
以下の通りに注意し正常値を維持しましょう。
- 空腹時血糖値は120mg/DL以下
- HbA1cは6%以下が理想
血糖値の正常値のまとめ
ここまで血糖値の正常値についてお伝えしてきました。
血糖値の正常値の要点を以下にまとめます。
- 空腹時の血糖値の正常値は100mg/DL未満
- 食後の血糖値の正常値は140mg/DL未満
- 血糖値が高い場合の看護方法は、血糖値を正常範囲に収める血糖コントールをする
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
コメント