概要 認知症要介護3について
要介護3は、本格的な介護開始の目安といわれています。
それでは、いったいどんな状態や症状が見られたら、要介護3と判定されるのでしょうか。
また、要介護3と判定されたら、家族はどのような対策を取るべきでしょうか。
本記事では、「要介護3」にまつわる、さまざまな事柄について解説します。
- 要介護3の状態や認知症の症状はどんなもの?
- 要介護3の介護ではどんなサービスや補助がうけられる?
- 要介護1〜5の違いは?
- 要介護3ではどのような介護をすればいい?
ぜひ、最後までお読みください。
認知症要介護3ってどんな状態なの?
要介護3とは、「要介護認定」の3段階目です。
要介護3では、身体能力の低下や認知症の進行が著しく、常に誰かのサポートや見守りが必要です。
家族や介助者の介護の負担が大きくなるため、介護施設や介護サービスの利用を迫られることもあります。
それでは、どのような状態や症状が要介護3にあてはまるのか、具体的に見ていきましょう。
状態
要介護3は、簡単に言えば、「ほぼすべての日常生活に介助が必要な状態」です。
自力で立つことや、自分1人での歩行は難しく、着替え・食事といった動作に、誰かのサポートを必要とします。
よって、排泄や入浴も1人では困難です。
また、寝たきりとまではいかなくても、じっとしている時間が長くなります。
移動は、車いすや歩行器を利用することが多いでしょう。
したがって、要介護3の方は誰かサポートしてくれる人が必要だといえます。
症状
要介護3では、認知症の進行に伴う各種症状や、問題行動がみられます。
判断力や記憶力が著しく低下し、「見当識障害」や「実行機能障害」があらわれることも多いでしょう。
ちなみに、見当識障害は、時間・場所・人が認識できなくなる障害で、実行機能障害は、物事を段取りつけて実行するのが困難になります。
要介護3は、要介護1・2と異なり、重度の周辺症状がみられるのも特徴です。
周辺症状とは、認知症の進行に伴い、本人の性格や環境が作用して、副次的にあらわれる症状のことです。
重度な周辺症状には、「幻覚」「せん妄」などがあります。
つねに不安定な心理状態におかれるため、「暴力・暴言」「イライラ」「徘徊」などの周辺症状を併発することも多いでしょう。
つまり、要介護3になると、代表的な認知症の症状が顕著に現れるということを知っておきましょう。
要介護3の認定基準とは
要介護認定は、主に、「1日のうちに介護に要する時間」を基準として、判定されます。
この基準は、「要介護認定等基準時間」であらわされます。
要介護3の認定基準は、要介護認定等基準時間が「70分以上90分未満」です。
要介護3認定の流れ
要介護認定の流れは、大まかに以下の通りです。
- 居住地の市町村窓口などで、要介護認定を申請する
- ケアマネージャーによる家族・本人の面談
- 主治医の意見書の作成
- 要介護認定等基準時間の審査(一次判定)
- 一次判定をもとに、専門家による本人への聞き取り調査(二次判定)
- 判定結果に応じて要介護認定
認定結果の有効期間に注意!
認定結果には、有効期間があります。
有効期間をすぎると、介護保険サービスが利用できなくなります。
有効期限切れ前日〜満60日前までに、更新手続きを行いましょう。
- 新規認定の有効期間…6カ月
- 更新認定の有効期間…12カ月
特に認定結果には有効期間があり、その期間を過ぎると介護サービスが利用できなくなることを忘れないようにしましょう。
要介護3の支給額限度について
要介護認定を受けると、介護サービス利用に必要なお金が支給されます。
要介護3の場合、支給額は最大27万480円です。
このうち、サービス利用料の1~3割は自己負担です。
自己負担割合は、サービス利用者などの所得に応じて決定されます。
また、サービス代金が支給限度額を超える場合、超過分は全額自己負担になるため、あらかじめお金を貯めておくとよいでしょう。
受けられるサービスについて
要介護認定を受けると、介護保険サービスの利用が可能になります。
また、利用できる介護保険サービスは、要介護認定のレベルによって異なります。
要介護3での利用できる主なサービスは以下の3つです。
- 特別養護老人ホームが利用できる
- 福祉用具のレンタルができる
- 介護リフォームに補助金が出る
特別養護老人ホームの利用ができる
要介護3からは、「特別養護老人ホーム(特養)」の利用が可能です。
特養は公的な介護保険施設の1つであり、比較的コストが安いのが特徴です。
特養への入所は、原則として「65歳以上の高齢者」「要介護度3~5」が条件です。
ただし、特養への入所は、「より高度なケアが必要とされる方」が優先され、利用希望者が多い場合、申し込みから入居まで数カ月~数年かかることがあります。
したがって、特養はコスト面ではいいが、入居が難しいといったデメリットがあります。
福祉用具のレンタルができる
介護保険サービスを利用すると、介護に必要な福祉用具のレンタルが可能です。
要介護3でレンタルできる福祉用具は、全部で以下の13種です。
- 車いす
- 車いす付属品
- 介護用ベット
- 床ずれ防止用具
- 特殊寝台・付属品
- 認知症老人徘徊感知器具
- 手すり
- スロープ
- 体位変換器
- 歩行器
- 歩行補助つえ
- 移動用リフト
- 自動排泄処理装置
福祉用具を活用して、認知症介護の負担を減らしましょう。
介護リフォームに補助金が出る
介護保険を利用すると、介護を目的とした自宅のリフォーム工事に補助金が支給されます。
補助金は最大20万円です。
このうち、工事費用の1~3割は自己負担です。
また、工事費用が20万円を超える場合、超過分は全額自己負担となります。
普段の介護負担を減らすためにも、介護リフォームの補助金を活用しましょう。
要介護3のケアプランと費用について
要介護3と認定されると、どのようなケアプランが作られるのでしょうか。
家族との同居、一人暮らし、施設入居の場合の3つの例についてご紹介していきます。
家族と同居する場合
在宅介護で家族と同居している場合にも、要介護3では要介護1、2よりも介護の回数が多くなります。
介護の回数が多いとその分費用がかかってしまいますので、自己負担額も増えていきます。
また、要介護3では食事の介護が含まれるのが要介護2の頃とは違う点です。
レンタルする福祉用具も増えるなど、受ける必要があるサービスが増えるため、要介護3では要介護2よりも費用が増えていきます。
サービス | 回数 | 自己負担額(1割の場合) |
訪問介護 | 月に8回 | 2,536円 |
訪問看護 | 月に4回 | 2,096円 |
通所リハビリテーション | 月に4回 | 4,200円 |
通所介護(デイサービス) | 月に8回 | 7,608円 |
訪問入浴介護 | 月に4回 | 5,564円 |
短期入所生活介護(ショートステイ) | 月に2日 | 1,854円 |
福祉用具レンタル | 1か月間 | 1,608円 |
合計 | 25,466円 |
一人暮らしの場合
要介護3で一人暮らしをする場合、日常生活で介護を必要とする場面はかなり多いため、月に受ける介護の回数が多くなります。
通所の回数も増え、月の半分ほど通所することになるため、月の昼食の半分は介護を受けることになります。
要介護3で一人暮らしをするのは大変になると言えるでしょう。
サービス | 回数 | 自己負担額(1割の場合) |
訪問介護 | 月に12回 | 3,804円 |
訪問看護 | 月に4回 | 2,096円 |
通所リハビリテーション | 月に4回 | 4,200円 |
通所介護(デイサービス) | 月に12回 | 11,412円 |
短期入所生活介護(ショートステイ) | 月に4日 | 3,708円 |
福祉用具レンタル | 1か月間 | 1,608円 |
合計 | 26,828円 |
施設に入居する場合
介護付き老人ホームへの入居をする場合には、自己負担が必要になってくるケースもあります。
また、特別養護老人ホームは比較的安い費用で入居できることが特徴ですが、この例では介護付き有料老人ホームよりも8万円以上安い費用で入居可能です。
特別養護老人ホームとその他の介護施設とは、入居にかかる費用が大きく異なります。
もちろん、費用だけでご家族の生活する施設を決定するのは賢い判断とは言えません。
介護付き有料老人ホームであれば、重介護の方にも対応可能なサービスを受けられる点は把握しておきましょう。
費用の内訳 | 介護付き有料老人ホーム | 特別養護老人ホーム |
介護サービス費用(1割負担) | 23,000円 | 26,756円 |
家賃・食費・生活費など | 210,000円 | 110,000円 |
合計 | 233,000円 | 136,756円 |
他の要介護度との違いについて
要介護度は1~5段階あり、数字が大きいほど高度なケアが必要です。
要介護1
要介護1は、基本的に1人で日常生活を送れる状態です。
たとえば着替え・食事などのやや複雑な動作に加え、入浴や排泄も比較的容易です。
ただし、スムーズではないため、誰かの手助けがあると安心でしょう。
混乱や理解力低下などの認知症状が、やや見られるものの、他人との意思疎通は問題なくできます。
問題行動もあらわれやすくなりますが、さほど目立つものではありません。
要介護2
要介護2も、基本的に1人で生活できる状態です。
ただし、要介護1よりも身体機能の低下が進んでおり、食事・着替え・入浴・排泄には、より手厚い手助けがあると安心でしょう。
理解力の低下や混乱などの認知症状も、要介護1に比べると、ややハッキリします。
しかし、要介護1と同様、他人とのコミュニケーションに著しい問題はありません。
周辺症状や問題行動も、「手がつけられない」レベルではないでしょう。
要介護3
要介護3は、要介護度5段階のうち、ちょうど真ん中にあたります。
要介護1~2では自立した生活が比較的可能ですが、要介護3では、ほぼすべての日常動作に介助を必要とします。
また、1~2よりも、認知症の症状がハッキリしてくるのも特徴です。
「徘徊」や「大声」などの問題行動が見られ、家族の頭を悩ませることも多いでしょう。
かといって、認知症状は要介護4~5ほど重篤ではなく、他人とのコミュニケーションは比較的可能です。
すなわち要介護3は、「重篤化の入り口」といえるでしょう。
要介護3からは特養への入所も可能となるため、「より本格的な介護開始の目安」とされています。
要介護4
要介護3よりも、身体機能の低下や認知症の症状の悪化が、顕著です。
自力で立ち上がることや、歩くことは困難で、「寝たきり」になる方も多くいます。
要介護3では、車いすや歩行器を利用すれば移動が可能ですので、要介護4は、より重篤であることが分かるでしょう。
認知症も進行し、他人とのスムーズな意思疎通は困難です。
また、混乱や不安から、問題行動を起こしやすくなります。
要介護5
ほぼ寝たきりの状態で、自力で動くのは、ほぼ不可能です。
認知症が進行し、意識が混濁しているケースも多くあります。
そのため、話しかけても反応がない・できない方もいます。
要介護3の介護方法について
要介護3の介護方法には、「在宅介護」と「施設介護」の2種があります。
それぞれの特徴や、利用できるサービスを紹介します。
在宅介護
要介護3では24時間体制のケアが必要となるため、家族や介護者だけでは、介護を続けるのが困難かもしれません。
在宅介護の場合、特に介護時に負担のかかる入浴やリハビリといったものには、ヘルパーや
サービスを利用するのもよいでしょう。
また、在宅介護と通所サービスの組み合わせも、効率的な介護を期待できます。
完全在宅で利用できるサービスの例
- 訪問介護(ホームヘルプ)
- 訪問入浴
- 訪問看護
- 訪問リハビリ
- 夜間対応型訪問介護
- 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
など
在宅介護で利用できる通所型サービスの例
- 通所介護(デイサービス)
- 通所リハビリ(デイケア)
- 地域密着型通所介護
- 療養通所介護
- 認知症対応型通所介護
- 小規模多機能型居宅介護
- 看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)
など
施設介護
さらに、身体機能や認知症の悪化により、24時間体制の手厚いサポートが必要な時は、介護施設に預けるのも1つの方法です。
在宅で介護し続けるのが困難な時は、終身利用できる介護施設がよいでしょう。
また、体調悪化などが一時的な場合は、短期入所できる施設の利用もおすすめです。
おなじく問題行動が著しい場合などには、短期介護施設を利用して気分を変えると、症状が改善することもあります。
長期で入所できる施設の例
- 特別養護老人ホーム
- 介護老人保健施設
- 介護療養型医療施設
- 有料老人ホーム
- 介護医療院
など
短期で宿泊・入所できる施設の例
- 短期入所生活介護(ショートステイ)
- 短期入所療養介護
など
介護で必要なものについて
介護に役立つ福祉用具や、あると便利なアイテムの例を紹介します。
必要なもの
要介護3では、自力での歩行や日常動作が難しくなります。
また、認知機能の低下から、記憶力も悪化します。
日常動作や記憶力の低下をカバーできる道具を揃えましょう。
- 歩行器
- 手すり
- 車いす
- 着替えやすいパジャマ
- (携帯できる)メモ・ペン
など
揃えた方がいいもの
あると便利なものを紹介します。
- 電動ベッド
- ポータブルトイレ
- ウエットティッシュ
- 体をふくためのタオル・ガーゼ
- 使い捨ての手袋
- 曲がるストロー
- (気分転換のための)テレビ・ラジオ
など
認知症要介護3まとめ
ここまで、要介護3に関する事柄についてお伝えしてきました。
- 要介護3では1人での生活がほぼ不可能
- 要介護1~5では「日常生活の可否」「認知症の度合」が異なる
- 要介護3認定を受けるには、申請して、介護時間や面談などの判定をうける
- 要介護3の介護には「在宅介護サービス」や「施設介護サービス」を利用する
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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